僕にとって「サーフィンやサーファーが描かれている小説」といえば、片岡義男の「波乗りの島」がまず思い浮かびます。
10代から20代にかけて「片岡義男」の小説にかなりハマっていました。
きっかけは本屋でたまたま見つけた「波乗りの島」というタイトルの文庫本でした。ちょうどサーフィンを始めたての頃で、タイトルに反応して何気なく買って読んだら片岡義男の世界観にハマってしまし。貪るように読むようになりました。
当時は角川文庫の文庫本を購入していたのですが、背表紙がなんとも言えない朱色でそこに白文字でタイトルが印字されており、自室の本棚は片岡義男の文庫本の背表紙で真っ赤になっていました。
残念ながらそれらの書籍の多くがすでに絶版となってしまっています。
片岡義男
著書の「スローなブギにしてくれ」「メインテーマ」「ボビーに首ったけ」などの作品が映像作品化されている小説家でエッセイストとしても有名です。
都会的な洗練された文章を書かれる作家さんで、お祖父さんが移民としてハワイへ渡り、お父さんも日系二世ということもあるのでしょうか、文章も海外文学の翻訳版を読んでいる様な感じでした。
小説は短編ものが多く、「サーフィン」「オートバイ」「旅」などをモチーフにした作品が多いです。登場する女性が凄く自分を持った大人な女性が多く、10代の僕はそんな女性に憧れを持って読んでいました。また、アメリカ文化にかんするエッセイも数多くあり、当時「アメカジ」という言葉も流行っており、毎回楽しみに読んでいました。
波乗りの島

「波乗りの島」はハワイを舞台にした波乗りの話です。他の4篇を加えた5つの短編は連作となっています。「白い波の荒野へ」は1974年に発表され、その後発表された4編を加え1980年に文庫化されています。
登場人物にも日本人はおらず、開発の波が訪れる前の古き良きハワイと舞台にサーファーを主人公とした話が、淡々と語られています。
また、波に対する描写が素晴らしく、特に「白い波の荒野へ」で、大波でライディングするサーファーの目線とそのサーファーが驚くほど緻密に描写されており、自分がその瞬間を体験しているかのような錯覚を覚えるほどで、ぐいぐい物語に引き込まれてしまいます。
逆に、情景描写がかなり細かく、読書に慣れてない人の場合はちょっと読みづらいかも知れません。
発表されて40年が経過した作品ですが、古臭さは全く感じません。古き良き時代のハワイでのサーファーの物語です。
週末波がなく波乗り出来ない時や、仕事が忙しくて海に行けてない時などに部屋で読むのにおすすめです。
収録作品
白い波の荒野へ
(作品紹介)「片岡義男.com」より
オアフ島の北海岸にある小屋で4人の若いサーファーが共同生活をしている。
50フィートという途方もない高さを持つ波を経験し、それを16ミリ・フィルムで撮影することにも彼らは成功した。
スクリーンに映し出された波を追体験する時間と一瞬に通り過ぎた現実の波の時間、待機の時間。
3種類の時間はしかし、すべてが1つになって彼らの人生の時間になる。
目の前にある圧倒的な無限を知ってしまった人間の充実した空虚がここにある。
心理を描かない作家・片岡義男の絶対処女作。
アロハ・オエ
(作品紹介)「片岡義男.com」より
片岡義男の処女作「白い波の荒野へ」を起点として連作のようにして書き継がれたうちの一篇。
「いま」を象徴するハリウッド資本による最新のクリエイティヴとハワイの歴史上、何度も繰り返された凶暴な大きな波が交錯する時
そこにエネルギーの炸裂と、人々の興奮と、そして自ら志願して「向こう側」に消えていく人々が出現する。
もう、消えてどこにもない波を、サーファーを、人々はスクリーンに見る。
ラスト、最も人口に膾炙した曲「アロハ・オエ」が聴こえてくる。
アイランド・スタイル
(作品紹介)「片岡義男.com」より
小説の前半部は、夜の海だ。
星空と月明かりがあり、その絶妙の光の中で「僕」は海と、この島と、サーフボードが完璧に調和した幸福に身を委ねる。
しかし、突然、かつて聞いたことのない重低音を海の底から聞くことになる。
それはいったい何の「前兆」か?
開発の手が伸び、変わりゆく島に、やがて
すべてを押し流す決定的な出来事が訪れる。
シュガー・トレイン
(作品紹介)「片岡義男.com」より
最後のサーフが消えるとき、彼女に巨大なサーフがやってくる。
美しく、大きな波で知られた島は、変わろうとしている。
火力発電に伴うコンクリート桶の建設が、景観ばかりでなく、ついにはサーフそのものを消してしまう。
抗いようもなく進行していくその流れは、誰が善で誰が悪という単純さを許さない過酷さで、かつて走っていた蒸気機関車の復活にも火をつける。
島そのものが持つ歴史、そこに暮らす人々の知恵から生まれるそうした一連の動きが、ある時、一人の女性の身心を直撃する。
それは慶賀すべきことであると同時にパニックに近い事態でもあり、やはり善悪の向こう側にある荒々しさに満ちている。
ベイル・アウト
(作品紹介)「片岡義男.com」より
海と対峙してしまった者たちにとって、人生は射出座席(ベイル・アウト)だ。
深く、海に魅せられてしまう人間がいる。
さしあたって、その人間は2種類に分かれる。
サーフボードで海に出ていく者と、海を、サーフを、サーファーを、フィルムに収める者だ。
フィルムを撮る者はサーファーに魅せられ、サーファーはフィルムに映った海に魅せられ、新たなチャレンジに出る。
彼らは降服の幸福を知っている者たちだ。
やがてその中のある者は、南太平洋の彼方へと消えて行く。
青空文庫
「青空文庫(あおぞらぶんこ)は、著作権が消滅した作品や著者が承諾した作品のテキストを公開しているインターネット上の電子図書館である」ウィキペディア
ウィキペディア

青空文庫では現在片岡義男の12作品が無料で読むことができ、「波乗りの島」も読むことが出来ます。

青空文庫ではテキストファイルやHTMLとしてデータ化されており、閲覧用のアプリケーション等は提供されていません。
「いますぐXHTML版で読む」のリンクからも閲覧できますが、横書きとなるので
備考欄にある「青空 in Browsersで縦書き表示。PC、スマホ、タブレット対応」のリンクボタンから縦書き表示することが出来ます。
「青空 in Browers」
スマホ用のアプリも複数ダウンロードできるのですが、「片岡義男」が上手く検索出来ませんでした。おそらく、著作権がまだ存続している関係だと思います。
「波乗りの島」はハワイ四部作と呼ばれるハワイと舞台とした短編集の1作目で、残り3作の「時差のないふたつの島」、「頬よせてホノルル」、「ラハイナまで来た理由」も青空文庫で読むことができます。
もし、「波乗りの島」を読んで気に入ったら、これらを続けて読むのもおすすめです。但し、これら3作は「波乗りの島」と違いサーフィンをメインとした話ではありません。
Amazon Kindle(アマゾン・キンドル)
片岡義男の作品は「青空文庫」以外では、「Amazon Kindle(アマゾン・キンドル)」でも読むことが出来ます。

Kindleは大手通販サイトのAmazon.comが販売している電子書籍リーダーで、Kindle用の電子書籍(Kindle版)として小説はもとより雑誌等幅広く販売されています。金額に関しても書籍と比べ若干安くなっています。また、Kindle端末が無くてもアプリケーションをインストールすれば、スマホ・タブレット・PCでも購入した「Kindle版」を読むことが出来ます。
*片岡義男作品に関しては超短編に関わらず、1作品の金額が275円(税込)となっています。短編集としての「波乗りの島」の販売はなく、収録されている5作品が各275円(税込)で販売されています。
僕も数年前に読書のデジタル化をするべく一番安いモノクロモニターのKindleを購入しました。その後、サブスクリプションサービスであるKindle Unlimited(キンドル・アンリミテッド)に加入し、雑誌などを読むようになると、モノクロモニターでは物足りなくなり、現在、雑誌関連はタブレット(iPad)、小説はスマホのアプリで読んでいます。
雑誌だと見開きで表示したい場合もあるので、タブレットかPCで閲覧したほうが便利です。なので、「長期間充電が出来ない状況での小説を読みたい」という特別なニーズ(バックパッカーとして長期間の旅行など)がなければ、リーダーは不要だと思います。但し、防水タイプのリーダーもあるので、お風呂で小説を読みたいというニーズの場合は購入もありだと思います。
Amazon.com Kindle Paperwhite 防水機能搭載Kindle Unlimited(キンドル・アンリミテッド)は月額980円で、雑誌は読み放題で、通常の書籍も「Kindle Unlimited」の表記がある書籍も読み放題です。
サーフィン雑誌の「サーフィンライフ」や「Blue.(ブルー)」「NALU(ナルー)」「サーフトリップジャーナル」も読み放題です。また、「Kindle Unlimited」の表記がある小説も読み放題の対象となっており、とてもおすすめです。
Amazon.com Kindle Unlimited 読み放題

片岡義男.com(かたおかよしお・ドットコム)
「片岡義男.com」からも電子書籍としての作品購入は可能です。

同サイトでは片岡義男の全著作電子化を行っており、支援者として「サポーター」を募集しています。
サポーターに登録すると販売されている469作品を無料で読むことが出来ます。また、サポーター限定の作品も数多くあり、こちらも無料で読むことが出来ます。
サポーターになるには一口1万円(何口でも可)を支払い、サポーター登録を行います。その際、オリジナルのTシャツのプレゼントもあります。一度サポーターに登録すると、その後は特に費用は発生しません。
僕も先日、サポーター登録したのですが、便利だったのは「タグで読む」です。

各作品がタグ付けされており、たとえば「ハワイ」というタグが付いた小説やエッセイが表示されるので、その中から気になった作品を選んで読むことが出来て便利です。
特に以前読んだ物語を読み返そうとした場合、どの短編集(エッセイ集)に入っていたかはもう忘れており、そんな時にタグを頼りに探せて便利です。
8フィートの週末
有料販売とはなりますが、「8フィートの週末」もおすすめです。
日本の南国にある離島が舞台となっている中編小説で、島でただただサーフィンをして暮らしている若者が描かれています。その彼を訪ねに来る元彼女である女性が3年ぶりにその島へ訪ねてきて物語が進んでいきます。
サーフィンライフの2019年11月号でも取り上げられたそうです。

まとめ
僕のおすすめするサーフィン小説は片岡義男の「波乗りの島」(短編集)です。
5篇からなる短編集で「青空文庫」で無料読むことが出来ます。
1970年代の古き良きハワイを舞台にしたサーファーの物語です。
「波乗りの島」は情景描写が詳細に描かれており、人によっては若干読みづらいかも知れないので、Kindle版で有料(275円)になりますが、「8フィートの週末」もおすすめです。
片岡義男の作品では他にもサーフィンが描かれている作品もあります。
- 限りなき夏1
- サーフボードの運命
- 波が呼ぶんだよ
- ボビーに首ったけ
- 海まで100マイル (エッセイ)
お気に入りの作品となればとても嬉しいです。
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