僕の中でサーフスターといえば、やはりトム・カレンですが、その次にはやはり、ケリー・スレーターです。
12年ぶりにケリー・スレーターの自叙伝である「PIPE DREAMS(パイプドリームス)」を読み返しましたのでレビューしてみたいと思います。
ちなみに、僕と同年代のケリーのサーフスターもトム・カレンです。
PIPE DREAMS(パイプドリームス)はアメリカで2003年に出版された、サーフィン界のスーパースター ケリー・スレーターの自叙伝を5年後の2008年日本語版として出版された本です。
翻訳はフリーペーパー「F+(エフプラス)」の編集長として知られる「つのだゆき」さんで、枻出版社より出版されています。
ケリー・スレーター
1972年生まれの48歳。6年連続を含む通算11回もサーフィンのワールドチャンピオンとなった、サーフィン界の皇帝です。
現在も第一線で競技活動を行っており、2019年宮崎で開催されたISAワールドサーフゲーでは惜しくも東京オリンピックで正式競技として開催されるサーフィンのアメリカ代表の座は逃してしまいました。(ジョン・ジョン・フローレンスとコロヘ・アンディーノが内定)
バスケットボールを知らない人でも「マイケル・ジョーダン」の名前は聞いたことがあるように、野球を知らない人でも「ベーブ・ルース」の名前は知っているように、海外ではサーフィンを知らない人でも「ケリー・スレーター」の名前は知られています。
ケリー・スレーターがそれほど有名な理由としては11回のワールドチャンピオンになった実績ももちろんですが、テレビドラマ「ベイ・ウォッチ」への出演やハリウッド女優とのゴシップ、近年ではドキュメンタリー番組「24/7」などサーフィンを知らない一般の人向けのメディアへの露出が大きく影響している様です。
アメリカの現地時間8月12日、アメリカで放送された優れたスポーツ番組を表彰する「41回スポーツエミー賞」において、2019年の12月にアメリカの衛星&ケーブルTV局HBOで放送された「24/7」が3部門で受賞しました。
レビュー

本の内容ですが、5分の2が幼少時代からプロ入りまで(1~5章)、残りの5分の3がプロ入り後からプロ入り後から6度のワールドタイトルを獲り3年のセミリタイア後にツアー復帰した2002年のシーズンまで(6~14章)となっています。
ちなみに翌年の2003年はハワイアンのアンディ・アイアンズとツアーの最終戦の最終ヒートまでワールドタイトル決定が持ち越されるという歴史的な年です。最終的にアンディ・アイアンズがパイプラインマスターズを制して、ワールドタイトルも獲得。
プロ入りまでの章ではフロリダのココアビーチという小さい波しか立たない地域に育ち(日本だと湘南のイメージでしょうか)、そのせいかハワイの大波に対して恐怖心を抱き苦手意識があったという内容は興味深いです。
あと、ケリーの初体験の際のエピソードも書かれていたりします(笑)
プロ入り後の章ではルーキーイヤーにいきなりワールドタイトルを獲り、翌年は2位(1位はデリク・ホー)、その後は5年連続でワールドタイトルを獲ったのですが、その年ごとにツアーに対する意気込みの変化が興味深いです。
また、セミリタイア(3年)した理由や自身の恋愛事情に関しても赤裸々に告白されています。
改めて読み返したのですが、タイトルにあるようにケリー・スレーターはハワイのパイプラインに対して並々ならぬ思い入れがあることが解ります。
また、先日亡くなった1993年ハワイ初のワールドチャンピオン デレク・ホーに関する記述や同じくハワイ出身で2019年に自殺未遂をして現在入院中の2000年ワールドチャンピオン サニー・ガルシアとのエピソードがぐっときました。
僕のお気に入りの歌手ジャック・ジョンソンは度々登場します。
ジャック・ジョンソンはハワイのオアフ島ノースショアにある世界で一番有名なサーフポイント「パイプライン」の目に住んでおり、ケリーは若い頃はジャック・ジョンソン宅にステイしてサーフしていたそうです。
パイプラインの目の前に住んでいた事は知っていて、パイプラインマスターズのトライアウトにも出場したことがあるとは知っていたのですが、これ程深い関係性だとは思わなかったです。
あと、音楽繋がりでいうとケリーが参加していたザ・サーファーズに関する話も面白いです。
パール・ジャムの前座でツアー帯同や日本にも来日公演しています。
僕もCD買いました!当時ラジオ番組で小林武史も絶賛していました。
ぜひ、若い世代の人にも読んで欲しいです!
多分最近のキッズはケリー・スレーターといえばスキンヘッドのオジサンのくせにサーフィンがうまい人、程度の認識だと思います。(彼らはブラジリアンのイタロやフェリペがお気に入りのようです)
ケリーがデビューした頃は、ちょうどコンテストシーンも世代交代の時期でケリー筆頭とした若手はニュースクールと呼ばれており、ニュースクールが繰り広げるフリーサーフィンさながらのリスキーな技が主流となり、オールドスクールを叩きのめしました。
ここ数年もブラジリアンの台頭やエアー全盛の時代とコンテストシーンもまた変わろうとしているように思います。
でも何故ケリーが通算11回もワールドチャンピオンになれたのか?
勝ち続けるということはどれ程、孤独なことか?
今も尚戦い続けているのはなぜか?
という事をこの本を読んで感じてくれたらと思います。
訳者あとがきにある
「時間が出来たら、私なりのもうひとつのパイプドリームスをまとめてみたいと思う。その頃には、アンディとの死闘から始まるパイプドリームス第2幕を、ケリーが書いてくれることを期待して……。」
パイプドリームス あとがきより
心より期待しています!
夏休みに地元のサーフキッズこの本を貸して読ませようかな?
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